5 つの業界におけるファネル分析の事例

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本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社ロケーションバリューが翻訳、転載しております。

カスタマージャーニーには、製品と業種ごとに独自の特徴があります。B2B の SaaS、消費者向けテクノロジー、E コマース、金融サービス、メディアの 5 つの業界におけるファネル分析の活用について、ファネルの例や企業の事例を交えご紹介します。

ユーザーのニーズを満たす製品を作るには、カスタマージャーニーを理解することが肝要です。皆さんの顧客(ユーザー)が自社の製品をどのように使用しているかを知るすべがなければ、コンバージョン改善に向けた取り組みは当てずっぽうになってしまいます。この知見を得るため、企業のプロダクト・マネージャーやマーケターの多くはファネル分析を活用し、ユーザーがたどる多様な経路を可視化しています。

しかし、コンバージョン・ファネルは万能なフレームワークではなく、製品や業界によって異なります。その違いを明確にすれば、皆さんの企業は独自のファネル分析を行い、ユーザーがコンバージョンに至る「道のり」を簡素化することができます。

ファネル分析とは?

ファネルのフレームワークは、カスタマージャーニーを表しています。ユーザーがコンバージョンに至るまでの経路を細かく示すものです。
典型的なファネルは AIDA モデルとして知られ、「認知」、「興味・関心」、「欲求」、「行動」の 4 つのステップから構成されています。

AIDA ファネル(認知、興味・関心、欲求、行動)

https://blog.amplitude.com/より引用

https://blog.amplitude.com/より引用

 認知: ユーザーが製品について知っており、ユーザーの注意を引いている
 興味・関心: ユーザーが有意義な形で製品に関するインタラクションを行っている
 欲求: ユーザーが製品の価値を体験し、コンバージョンへの意欲がある
 行動: ユーザーがコンバージョンを達成

各ステップにおけるユーザーの行動は、企業の業種に応じ異なります。
ファネル分析の目的は、カスタマージャーニー全体において、ユーザーが次の段階に進むことが困難な箇所、いわゆる「フリクションポイント」を特定することにあります。障壁となっている要素を認識することにより、考え得る解決策を試し、より多くのユーザーをゴールへと誘導することができます。

B2B の SaaS におけるファネル分析

B2B の SaaS 製品(プロダクト)は、ユーザーがビジネスタスクを完了するのに役立ちます。多くはサブスクリプション・モデルで展開されています。(唯一ではないものの)同セクターで一般的なコンバージョン・ファネルのひとつに、無料から有料のユーザーに移行するコンバージョン・パスがあります。企業はより多くのユーザーを取り込むため、まずプロダクトの無料版を提供し、その後、ユーザーの関心を喚起することで、有償でのみ提供する機能が使える有料版への登録を促します。 

無料版から有料版へのコンバージョン

無料版から有料版へのコンバージョン

表の例では、ユーザーの離脱がもっとも多く発生しているのは、サブスクリプションの「ランディングページ」と「アップグレードへのコンバージョン」のステップの間です。このことから、以下の仮説を立てることができるでしょう。

  1. ターゲティングに問題があり、意欲の高いユーザーに対しターゲティングを行っていない可能性があります。
  2. タイミングの問題であることも考えられます。(より高価なバージョンへの)アップセルのタイミングが適切ではない場合です。

2 番目の仮説では、ユーザーはアップグレードを検討する前に、無料プランから十分な価値を得るにはさらに多くの時間が必要であるか、あるいは有料の機能について十分な情報を得られていないことが原因として判明する可能性があります。その場合、有料機能の価値に対するユーザーの認知度を高める必要があります。いっそう詳細な分析とユーザー調査を組み合わせて行えば、実際の問題に的を絞り、解決策を考案することができるでしょう。

事例: 8×8’s Jitsi.org

音声、動画、コラボレーションなどのクラウドサービス・プロバイダー、8×8 社は、同社のビデオ会議ツール「Jitsi.org」 事業の成長率が横ばいであることに気づきました。そこで、Amplitude の Funnels(ファネル)および Conversion Drivers(コンバージョン・ドライバー)機能を使用して、原因追求を図りました。

同社がファネル分析を行ったところ、ブラウザー上でビデオ会議ツールを使うことを可能にする Chrome の拡張機能を活用しているユーザーが極めて少ないことが分かりました。一方、拡張機能を使用したユーザーは、コンバージョンに至る可能性がはるかに高いことも判明。8×8 社がこれらの機能をさらに目立たせ、訴求した結果、ユーザーの 1週間(7日)目のリテンションが倍増しました。

ファネル分析を行動コホートと組み合わせて実施することで、他にも意外な発見がありました。ユーザーは、予定されている会議よりも、突発的な会議をより多く行っていたのです。この知見を生かし、8×8 社はプロダクト・ロードマップを変更し、ユーザーが自発的な会議をさらに容易に行えるよう、アップデートをリリースしました。

コンシューマー・テクノロジーにおけるファネル分析

コンシューマー・テクノロジーの領域は広範であり、生産性向上アプリやモバイルゲームなど、日常的に使われる様々なデジタルツールが含まれます。同セクターにおけるファネルの機能のあり方を理解するため、仮にコーヒー販売アプリについて考えてみましょう。このアプリを使えば、顧客はリモートであらかじめ注文を行い、列に並ぶことなく商品を受け取ることができます。

モバイル注文と受け取りの流れ

モバイル注文と受け取りの流れ

表を見ると、顧客がメニューの詳細を閲覧する段階と、「ケース」(コーヒー販売アプリにおいて、顧客による最終的な選択の実行を指す用語)を完了するステップの間で、大幅な離脱が発生していることが明らかです。さらに多くの顧客のコンバージョンを促すため、コーヒー販売アプリのチームは、例えば、提示インターフェイスの最上部にもっとも人気が高いメニューを表示し訴求することにより、「ケース」完了が増加するかを検証することができます。

事例: MINDBODY(マインドボディ)

「MINDBODY(マインドボディ)」は、ウェルネス業界においてユーザーとフィットネス事業者をつなぐために役立つデジタルプラットフォームです。ユーザーはアプリを使用してエクササイズなどのクラスを見つけて予約し、自信のフィットネスの全体的な目標に向けた進捗を追跡できます。

MINDBODY は「Activity Dashboard(アクティビティ・ダッシュボード)」と称する新機能をリリースした後、ファネル分析を用いて新機能の追加がコンバージョン目標、すなわち「クラスの予約」にどのような影響を及ぼしたかを確認しました。結果、「アクティビティ・ダッシュボード」を活用したユーザーは(使用していないユーザーに比べ)、1週間に予約したクラス数が 24%、多かったことが判明。この情報に基づき、MINDBODY は新機能をナビゲーションバーの目立つ位置に表示しました。

また、ファネル分析により、MINDBODY は「Book It Again(再度予約する)」というボタンを介したコンバージョンが、クラス予定が他の経路で閲覧された場合に比べ、4.5 倍も増加したことを確認できました。

E コマースにおけるファネル分析

E コマースにおけるファネルは、顧客のウェブサイト訪問から購入に至るオンラインショッピング体験の過程をたどるものです。マーケターは通常、顧客を主要なランディングページに誘導するソーシャルメディアや検索連動型広告などのアトリビューションのチャネルも追跡します。

顧客が「商品の閲覧」から「カートでのチェックアウト」を完了する割合(1 週間)

顧客が「商品の閲覧」から「カートでのチェックアウト」を完了する割合(1 週間)

E コマース企業がファネル分析を行うと、(表中の下落幅に表れているとおり)往々にしてカートに商品が追加された後に多数の顧客を失っていることに気づきます。この段階では、多くの場合、顧客に対するターゲティングが有効です。顧客はすでに商品に対し「欲求」を示しているからです。ブランド企業は、チェックアウトフローにおける離脱の原因となる問題点を減らしたり、リマインダーとしてメールまたはページ上での通知を配信したりすることで、顧客がカートに残した商品について思い出すよう促すことができます。

事例: Rappi(ラッピ)

中南米の宅配サービスアプリ Rappi(ラッピ)は Amplitude を使用し、様々な種類のコンバージョン・ファネルの A / B テストを実行しました。Rappi のファネルは、無料の宅配サービスなどのメリットを提供する「Prime(プライム)」プログラムへのユーザーのコンバージョンを追跡しています。Rappi はある実験を通じ、無料トライアルまたは安価なトライアルの提供が、サブスクリプション登録者数の増加につながるかを検証。低料金で 1 カ月間のトライアルを行ったユーザーは、トライアル終了時に有料メンバーとして加入する可能性が、他に比べ 25% 高いことが明らかになりました。

これを機に、Rappi は宅配の送料に関する他の実験も行いました。Rappi は「プライム」メンバー以外のユーザーが、注文に送料が追加された時点で購入ファネルから実に多く離脱していることを把握。そこで、特定の金額の注文を行ったユーザーに、無料配送を提供することでユーザーの行動が変化するかをテストしました。Rappi の「賭け」は成功。送料無料の特典はユーザーの動機づけとなり、注文量は従来比で 15% 向上したのです。

ファネル分析はまた、多様な実験がマイナスの影響を及ぼした際に、その事実を把握する上でも有効でした。Rappi が「カートの確認」の段階で表示していた送料の課金を、「チェックアウト」のステップでの表示に変更したところ、チェックアウトに進むプロセスを完了するユーザーが 5%、増加しました。しかしながら、下流、つまりファネルの最終ステップに影響を及ぼし、総発注数が 5% 減少したのです。ファネル分析によると、一見、成功したかに見えた実験は、実際には適切な手法ではなかったと言えます。

金融サービスにおけるファネル分析

フィンテック製品は、企業や消費者の双方が、ソフトウェアを使用して財務を管理する上で役立ちます。ユーザーのカスタマージャーニーは金融商品により異なるものの、通常、アカウント開設と各種の金融関連のタスク完了を含みます。ここでは、上場株への投資に有用な架空のアプリを例に、ユーザーがたどるプロセスを説明します。

アプリの起動 --> 取引の実行

アプリの起動 --> 取引の実行

新規ユーザーの大多数は送金直後に離脱するため、ユーザーが苦労する問題がどこにあるのかを調べる必要があります。ユーザーは求める株式銘柄を素早く発見できているか。 現在、どのように銘柄を探しているのか。コンバージョンに至ったユーザーが取引完了に要する時間は。ユーザーがリアルタイムで取引を実行できるよう、即座に資金を使用可能にするには、どうすればよいか、といった事項を確認します。

事例: QuickBooks(クイックブックス)

会計ソフトウェア QuickBooks(クイックブックス)を運営する大手企業の Intuit(インテュイット)がファネル分析を行ったところ、ユーザーの多くがオンボーディングの過程を完了していないことが分かりました。さらに詳細な分析を経て、同社はオンボーディング中にユーザーが次の段階に進むことが困難な箇所(フリクションポイント)を減らすべく、削除してもよいステップを 3 つ、特定。新たなプロセスでは、「プッシュ通知の受信に同意するユーザー数」というKPI のひとつが 25% 向上しました。

Intuit 社は同じくファネル分析により、QuickBooks の請求書作成・処理機能別に関する別の問題を解決。それは、期限内に支払いを行うユーザーが、目標数に達していないというものでした。同社はコホート分析を使用し、ファネルを詳しく掘り下げ、問題が Gmailのドメインを持つ特定のユーザーセグメントに関連することを把握。Intuit 社はこのセグメントを対象とする独自のソリューションを構築し、期限通りに支払いが行われる請求書数を倍増させました。

メディアにおけるファネル分析

報道媒体であれストリーミングプラットフォームであれ、メディア企業は頻繁にファネル分析を行い、ユーザーが自社のコンテンツをどのように消費しているかを理解しています。

コンバージョン率: 登録からダウンロードまで

コンバージョン率: 登録からダウンロードまで


この表は、架空のストリーミングプラットフォームを例としたものです。離脱がもっとも多いのは、ステップ 1 の「ユーザー登録」とステップ2 の「曲またはビデオの検索」の間に発生しています。プロダクト・チームは、この段階で多数のユーザーがプロセスを放棄する原因を調べる必要があります。

事例: NBCUniversal(NBC ユニバーサル)

大手メディア企業の NBC は、ファネル分析を活用し、ユーザーが同社の Vizio TV(ヴィジオ・ティーヴィー)でコンテンツをどのように消費しているかを理解しました。同社は小規模のユーザーセグメントを対象に、ホームページ上に構築した新たな顧客体験に関するテストを実施。この実験は成功し、視聴者数が 10% 向上しました。その後、NBC 社はこの新しい顧客体験をユーザーベース全体に拡大展開しました。

同社はさらに、ファネル分析により、ホームページについて異なる実験の評価を行いました。ユーザーの視聴履歴に基づき、表示する内容をパーソナライズするテストです。この取り組みの結果、ユーザーの一週間(7 日目)時点のリテンションが 2 倍に拡大しました。

一方、どのような要素が効果を生んでいるかを理解することと同様に、適切に機能していない要因を把握することも重要です。NBC 社によるファネル分析では、ユーザーによるレビュー評価の機能が、目標とする指標に影響を及ぼしていなかったことが判明。同社はこの機能の開発を迅速に終了し、時間とリソースをさらに投入することを回避できました。

ファネル分析のレベルアップを

ファネル分析は、コンバージョン、エンゲージメントおよびリテンションの改善方法をテストするプロダクト・マネージャーにとって、重要なツールです。マーケティングキャンペーンやウェブサイトの最適化にも役立ちます。しかし、このような取り組みは基本的なものであり、最適な分析ツールを生かして実現できることは他にも多数あります。エンドツーエンド(一気通貫)のカスタマージャーニーを真に理解し、最高のユーザーエクスペリエンスを構築するには、プロダクト・インテリジェンスの活用を始めるべきでしょう。

 

本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社ロケーションバリューが翻訳、転載しております。
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公開日:2020/09/21
アンドレア・ワング(Andrea Wang)


ワングは Amplitude のグロース・プロダクトマネージャーとして、プロダクト主導による Amplitude の事業成長を促進しています。ウェブサイト訪問者のコンバージョン、無料から有料メンバーシップへのコンバージョンやグロース・モデリング、ならびに社内各チームの強化に資する内部ツールの整備に従事しています。

 

引用元:Amplitude社ブログ


 

【著者紹介】

グロースマーケティング編集部

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